私のお客様で会社のお金を横領する人はいません。
私はそう信じています。
ちなみに、会社のお金を横領すると、税法上はどうなるのでしょうか?
今回は、会社のお金を横領した場合の税務について考えてみます。
会社のお金を横領すると税務調査がくるかもしれない?
ニュースでも時々耳にする横領。
会社のお金を横領なんてできるの?と思ってしまいますが、税務上は横領に関する裁判事例が数多くあります。
今回は知り合いの弁護士さんが関与し、税務を相談されたケースをご紹介します。
お兄さんが会社の代表取締役社長で、弟さんが会社の専務のケースで、役員はお兄さんと弟さんの2名です。
お兄さんは会社の代表権を有しており、日々経営判断を行なっています。
弟さんはお兄さんを経理面でサポートし、経理の責任者という立場でした。
弟さんが経理の責任者という立場を利用して、会社のお金を横領した場合には、どのような展開になるでしょうか?
今回の事例では、会社にはうまく?隠し通せていたのですが、税務署は横領している不正がわかったようです。(税務署は様々なデータを持っています。)
税務調査で税務署から経理の不正を追求され、横領の事実が発覚しました。
ちなみに、今回の事例は事前に通知なく税務署が調査に現れる、事前通知無しの税務調査でした。
弟さんが会社から不正に横領したお金は税務署はどのように主張して、追徴(税金を追加で課税させる)するのでしょうか。
税務調査で横領が発覚した場合の税務署の狙いは?
会社のお金を横領した場合に、税務署が主張してくる論点はズバリ、役員賞与です。
以下、税務署の考えることを見ていきましょう。
会社のお金を役員さんが不正に引き出して使っている=会社が役員さんにお金を支給した、つまり給料と同じ扱いとなりますよね?
役員さんへの給与となった場合、給与からは所得税を源泉徴収しなければいけません。
会社はお給料から所得税を源泉徴収して、国に納付する義務があるのです。
みなさんのお給料からも毎月所得税が天引きされているはずです。
結論としては、税務署からは源泉所得税の納付漏れを指摘されます。(仮装隠蔽による経理も追求されて重加算税というペナルティも発生)
これが税務署の主張です。
しかし、この税務署の主張は正しいのでしょうか?
会社としては、役員にお金を横領された被害者なはずです。
その被害者にさらなるペナルティが待っている。
こんなこと、許されるのでしょうか?
役員が会社のお金を横領したら、税務上は役員賞与?役員貸付?損害賠償請求権?
今回のケースでは、会社のお金を横領したのは弟さんである専務でした。
専務は役員ですので、今回のような支給であれば税務署は役員賞与と認定してきます。
しかし、横領によって不正に会社から引き出され、弟さんに渡ったお金は役員賞与と言えるのでしょうか?
結論ですが、役員賞与とみなされた判例はありません。
代表取締役が横領した事例では、役員賞与と認定された事例はあるのですが、代表権を有しない役員の横領では役員賞与が認定された判例は見当たりませんでした。
そもそも、役員賞与とされる前に、役員に対する貸付金とするのが本来の落とし所な気がします。
会社が知り得ない不正に引き出された横領で、被害者であるはずの会社に対して、源泉徴収漏れを指摘するのはどうしても違和感しかありません。(代表取締役が横領していた場合は会社としても横領を知り得た余地があるかも知れませんが。)
また、役員が横領を認めて、会社にお金を返す意思を示した場合は、会社は損害賠償請求によって役員からお金を返してもらうことができます。
横領によって会社からお金が流出したとしても、いずれは返還がされる損害賠償請求権であるとの主張も可能です。
もし、税務署の言いなりで役員賞与として処理していれば、役員から横領されたお金を返還してもらった場合、雑収入として会社は処理することとなり、さらに税金がかかるというなんとも言えないことになります。
税務調査はこわいと思いますが、とりあえず真っ先に税理士に連絡してください。
<編集後記>
先輩税理士との勉強会に参加しました。税理士は勉強を辞めた瞬間にただの人になると感じます。死ぬまで学ばねばなりません、、、過酷な職業だ
<本日の1日1新>
ニトリの収納を購入しました。案外大きくて事務所まで持って帰るのに苦労しました。